アパレル業界に小ロット生産が求められている?メリットやリスクも解説!
自社ブランドの売上が伸びず、在庫を抱えていませんか?近年は顧客のニーズが変化し、アパレル業界にも大きな転換が求められています。転換の一つが小ロット生産ですが、実際にはコストがかかり、二の足を踏む経営者が多いでしょう。ここでは現在求められているアパレル業界の課題、小ロット化のメリットやリスクについて説明します。
消費者が求めるものはコスパの良さ?業界の課題とは
洋服の需要が落ち込んでも、低価格・高機能をうたった商品は確実に売上げを伸ばしています。消費者はデザイン性や最新のおしゃれを認識しながらも、衣類として高い性能を持った商品を手に取るようになりました。高い保温性を持った冬物インナーが長く人気を維持しています。こうした消費の現状を踏まえ、達成すべきアパレル業界の課題とは以下の3点があげられるでしょう。
低価格商品の提供
現在の消費者は洋服に高いお金を使う必要はない、と認識している人が多いようです。価格は可能な限り低価格に抑え、消費者の目に届くよう努力しましょう。
高機能商品の開発
消費者は低価格でも、機能性の高い商品を求めています。衣類の基本である、夏涼しくて冬暖かい機能を持った服が人気です。着回しがきく、長く着られるなど、ひんぱんに買い替えなくてもよい服も需要があるので、新商品の特性に取り入れてください。
ECサイトの運営
現在の洋服販売はECサイトとの連携や運営が不可欠です。外に出る機会が減ったため、人々はWeb上の販売店を利用します。ECサイトは電子商取引(イーコマース)を行うWebサイトで、実店舗よりも売り上げが伸びています。自社アプリや動画配信サービスを利用して、消費者にアピールしていきましょう。
小ロット生産が求められる背景
かつて日本の洋服は大量消費の時代で、ロット数を上げて大量生産し、同じブランドのものが飛ぶように売れていました。街中には買ったばかりの洋服を着た若者が、「もっと新しく!もっとおしゃれな洋服」を求めて、アパレルショップに来店します。大量生産の時代は大量廃棄の時代でもあり、洋服は「着たら捨てる」が繰り返されました。当時はロット数を上げても、在庫過多にならない、消費の厚みがあったのです。
しかし2019年頃から、事態は一変しました。コロナ禍の影響により、外出が減り、外出着の需要は激減したといえます。海外のファッションメーカーは日本国内から撤退し、ファッションビルの閉鎖が相次ぎました。消費者はお金を余り使わない世代にシフトしています。大量生産、大量消費の時代が終わり、社会には大量廃棄をどうするか、という問題が残りました。
2015年、国連で採択されたSDGs、持続可能な開発目標の中に「つくる責任・つかう責任」の項目があります。「持続可能な生産消費形態を確保する」という意味で、アパレル業界にあっては洋服の生産と消費のバランスを取ることが、要求されているのではないでしょうか?在庫破棄、処分数を減らすには、売れるものを売り切れるだけ生産する体制が必要です。これを実現するには、小ロット生産に転換する方法が最も効果的といえるでしょう。
小ロット生産を行うメリットとリスクについて
アパレル業界の内外で、時代は多様化しています。今月、流行していたものが、来月には不人気になるかもしれません。小ロット生産を実現すると、需要が変化しても、在庫数は少なくなり、顧客の新たなニーズに対して、即時対応できます。大量の売れ残りを抱え、損失が発生するリスクを防げるのです。
また在庫数を多く抱えると、生産にかかる経費を回収できません。中小企業にあっては、当月の運転資金に影響する場合もあるでしょう。小ロットで生産数を少なくすれば、生産経費も低く抑えられるので、次の洋服を生産する資金繰りが楽になります。
他にも生産現場におけるマンパワーにも大きなメリットがあるといえるでしょう。洋服の生産数が少ないと、生産ラインにトラブルが起こった際、すぐにラインがストップしてしまう危険があります。生産者はトラブルに発展しないよう、常に緊張感を持ち、一人ひとりに強い責任感が生じるでしょう。少ない量で高い品質の洋服を作ろうと、生産者の意識が高まります。結果的に個人の生産能力、洋服に対する管理能力が向上するのです。
しかしロット数を下げ、異なる種類の洋服を複数作るには、生産上、経営上のリスクも生じます。小ロット生産はコストパフォーマンスが、下がってしまうでしょう。少量生産は大量生産に比べ、生産効率が低く、価格を抑えきれません。顧客のニーズに合わせて、生産ラインを変更すると、一旦ラインは停止、製造をストップさせなければならないのです。しかし臨機応変に対応できる小ロット化は、ヒット商品に辿りつけば、リスクを回避し、経営の起爆剤になる可能性があります。
まとめ
大量生産の時代が終わり、アパレル業界には小ロット生産が求められています。需要に見合った量を生産し、売れ残りを発生させない努力が必要です。今後は消費者のニーズを反映して、低価格で高機能商品の開発が求められます。外出する人が減ったため、ECサイトを大いに活用してください。小ロット生産は顧客のニーズに即対応できるなどのメリットがありますが、大量生産に比べコストがかかるというリスクも抱えています。